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仲の良い男女がピッタリとくっついているのは微笑ましい風景だが(そうでない場合も多々あるが)、他人同士であれば同性であろうが異性であろうがあまり近付きたくないもの。しかし女満別あたりでキタキツネと暮らしているならともかく、都会に住む以上はエレベータや混んだ電車などでそのような事態に遭遇するのは仕方がない。

ゴルゴ13は背後に人が立つことを許さないが、命を狙われていない一般の我々だって他人が意味なく近くに来るのはあまり嬉しくはない…はず。が、不思議なことが多い。

やたらに空いた電車に乗っていて、駅に着き新しい客が乗ってくる。清々とした車内なのだから離れたところでゆったり座ればいいものを、人が座っている近くにわざわざ座る人はかなりの確立でいる。男女や年齢には関係ない。

もし先に座っているのが甘い香りのする矢田亜希子のような美しい女性であれば、近くに座りしげしげと見たくなる気持ちは分かる(私は気が小さいのでそのような場合は少し離れたところに立ち、ちらちらと見るのが関の山だろうが)。しかしそれは関係ないようなのだ。先に座っているのが中年の男性であろうと初老の女性であろうと、なぜか寄って行く人々がいる。

そこは君の指定席だから?それともその位置が安全(飛行機では事故の時、胴体真中あたりに座るほうが生存率が高い)だから?人間が大好きだから?

連休中のある日の7時40分、とある店のまだ誰もいない2階席で朝食を取っていた。窓際のカウンター席でだ。すると40歳くらいのインテリ系男性が来て、私の真後ろのテーブル席に座ったのだ。

店員がサービスをしやすいように席をまとめることはある、しかしここは自由席だ。40席ほどある店内で、見知らぬ男同士が半径1メートル内に二人。なぜですか?と私は聞きたかった。休みの朝の、爽やかな気分を台無しにしてくれた彼にだ。しかしそんなことは出来るはずもない。

ひょっとしてどこかの情報機関のエージョントか?狙われている?ありえない。こんなことを考えるのは昨晩読み終えた「亡国のイージス」が頭の中にこびりついているせいだ。

くつろいだ気分はすっかり消えてしまった。幸いに食事は終了して、新聞を読んでいただけだったのでテレビ番組表と社会面は読まずに席を立つ。

そのとき気がついた。ひょっとして私の座っていた席が彼の指定席で、追い出すために近くに座ったのか?まんまと策略に引っかかったのか。だとしたら私の性格を見抜いた中々見事な戦略だ。

もう夏を感じさせる太陽の光を浴びながら自宅に戻ったが、私の心は曇っていた。